BOSE301MM (初期製品)改造の話 メーカー写真はMarkUです。ウーファーの コーンが青いので。最初は黒でした。 <とってもマニアックな話です。興味があっても 言葉が分からない時は検索して調べてくださ いね。説明すると大変な量になりますから・・・> |
お店のスピーカーの音が変になりました。壁から外してサランネットを取ると・・・なんと
ウーファー(低音用)のエッジがボロボロ!材質の発泡ウレタンには有りがちなんです
が、これほどとは・・・思えば20年以上使ってるので、経年変化起してもおかしくありま
せん。スピーカーは、日本で大ヒットしたBOSE301MMです。ネットで調べると、2万
円でエッジ交換してもらえます。もうモデルチェンジしてますが、買えば1本5万円とかし
ますから、この修理代は安いものです。ただ僕は、このスピーカーに思い入れがないん
です。直してまで使いたいかなあ・・・って思いました。301MMは、音の広がりがあって、
ガンガン鳴るスピーカーですが、ともすればウルサイ音なんです。JBLとか日本のダイ
ヤトーンの音が、どちらかといえば好みなんです。緻密な音とでもいいましょうか・・・
じゃあ、なぜと言われてしまいますね。これ、閉店した店のモノを内装業者が持ってき
たからなんです。「BOSEかあ〜まあPAならいいかあ」と言って引き取ったのを思い
出します。父親がオーディオが趣味で、家には色んなものが転がっていました。それら
を拝借して、色々と作ったものです。大学生の頃は、JAZZにハマって、アルバイトで
得たお金を、オーディオやレコードに費やしました。秋葉原のガード下のパーツ屋街は、
子供の頃からの行きつけの場所でした。お店始めてオーディオに没頭する時間もなく
なって、そのままになっています。そんな訳で理系ではありませんが、アンプやスピー
カーの設計や製作を全く知らないわけではありません。今の時代、故障したら直すより
買う方が安いし、まして作るなんて、マニアしかいませんね。昔はオーディオは高かった
から、結構、趣味じゃない人も作ったものです。長い前置きになりました。本題。
「久しぶりにいじってみるか・・・」と、火が点きました。スピーカーユニットだけ換えて楽
しもうと思いました。厨房で、仕込みの時に音楽聴いているスピーカーのメーカーが、好
きなので、それで揃えようと、BOSEと同じサイズの20cmウーファーとツイーターを、ア
マゾンに発注しました。DAYTON AUDIOというBOSEと同じアメリカのメーカーです。
特性的には日本のメーカーのものは優秀なんですが、音楽の再現性という意味では、
まだ海外のモノにちょっと及ばないと個人的に思っています。海外製のJBLやALTEC
やタンノイでも、音楽聴いていて、ハッとする驚きがあります。このメーカーも同じです。
しかも前述したメーカーのものと違って、DAYTON AUDIO製品安いんです。1/5くらい!
安くてもマグネットはしっかりしてるし、見た目の高級感もあります。誤解のないように書
きますが、BOSEが悪いわけではありません。音楽と一緒で好みの音ではないという話
です。ロック嫌いな人にレッドツェッペリンのサウンド語るような感じです。。
左の写真が使ってるスピーカーです。PS95−8というフルレンジをバックロードホーン
の箱に入れたものです。箱はFOSTEXという有名なメーカーのユニット用です。この専
用スピーカーの音は好みではありませんでした。音が暴れるとでもいいましょうか・・・
それで、このPS95−8に交換しました。これ!中音の艶が最高です。女性ボーカルに
色気が出ます。メーカーさんは、直径95mmと言ってますが、実際は65mmしかありま
せん。(インチの違いなの?)でもそんなの気にならない音の良さがあります。(アマゾン
で3900円でした。)
1日たって注文してた品物がアマゾンから届きました。便利な世の中です。ウーファー
2本で1万4千円、ツイーター4本で3千円です!知らない人は安いのかも分かりません
ね。オーディオ知ってる人にはビックリの値段ですよ。ツイーター4本あるのはBOSEの
スピーカーがそういう構成だったからです。そのまま置き換えるつもりでした。ところが
BOSEのウーファーを外して中見てビックリ!(右の写真)数万円もするスピーカーなの
に、スピーカーネットワーク(アンプからの電気信号を高音と低音に分離する回路)がな
い!ツイーターの低音カット用に3μFのコンデンサー(オレンジ)が1個と、2個あるツイ
ーターのインピーダンス揃え用に抵抗1個です!唖然です。自作スピーカー並ですよ〜
しかもこの状態は6dbネットワークです。普通メーカー品は、最低でも12dbのネットワー
クが付いているのが当り前なんです。24dBだってあります。BOSEは、ウーファーはス
ルー(ハイカットしない)にして、伸び伸びとした音作りを狙っているのでしょうか・・・
BOSEの音が好きでない理由が分かりました。これでは、緻密な音が得られるはずが
ありません。パーンと鳴る理由も、スピーカーユニットの個性だけではなかったのです。
ネットワークで音が変わるのかと思うでしょ、これが同じスピーカーかと思うほど変わる
んですよ。料理で言えば、スピーカーユニットは素材で、ネットワークは調味料です。つ
まり、音の味付けがネットワークです。フルレンジ1本は例外ですけどね。
BOSEに付いているコンデンサー3μF1個は、クロスオーバーは6500Hzあたりで
すから、買ったDC200−8というウーファーには無理です。このウーファーは3000Hz
が限界です。結局スピーカーネットワーク作らなくてはなりません。個人で作るのは、
音の調整大変なんです。余裕みてクロスオーバーは2000HZかな・・・こうなると、
注文したツイーターで、2000〜20000Hz受け持たせるのは、ちょっと厳しくなりまし
た。スピーカーの個性を司るのが、この帯域です。ならいっそのこと、音が好きな上の
PS95−8を使おうと思い立ちました。中音パート(スコーカーといいます)にフルレンジ
スピーカー使うほうが、音をまとめ易いです。初心者におすすめです。気に入った音の
スピーカーというのがポイントです。それと、理想のクロスオーバーの数値を気兼ねなく
ウーファー側に合わせられますから。メインの音がPS95−8で、それにスーパーウー
ファーとスーパーツイーター追加する感じです。
上の図は、3つのスピーカーの周波数帯域です。幸い3本のスピーカーの能率がイイ
線いってます。揃ってるという意味です。下の図は、ネットワークによって、余分な音が
カットされるであろう予想図です。高音の方がちょっと高いのも理想的なカーブです。
ツイーターのクロスオーバー8000Hz(8KHz)にするか、12000Hz(12KHz)に悩
みましたが、PS95−8の音を生かすため、12KHzに決めます。あとネットワーク6db
か12dBにするかも悩みます。両者の違いはカットした音が、6dBは緩やかに落ち、
12dBは急に落ちます。簡単に言うと、6dBは自然な音になり、12dBは鮮やかなシ
ャープな音になりやすい感じです。ただ12dBネットワークは、パーツを6dBネットワー
クより倍使います。ローカットのコンデンサーは安い(数百円)のですが、ハイカットの
コイルは概して高価(数千円)です。安いパーツもありますが、音の質を落とします。
12dBにすると、今回買ったスピーカーユニットと同等の金額がかかります。PS95−
8は、とてもシャープな音なので、6dBでもいいかと、思い込む事にしました。これじゃ
BOSEの箱しか使わない事になります。これも改造なのかな?
C=159000÷( )Hz÷( )Ω L=159×( )Ω÷( )Hz 6dB
この数式は、ローカット用コンデンサー(μF)の値と、ハイカット用コイル(mH)の値を
簡単に求めるものです。6dB用です。例えば8Ωウーファーを800Hzでハイカットした
い場合、L=159×8Ω÷800Hzとなり、答えは1,59mHです。市販のコイルで探す
と、1,6mHになります。接続方法は下図です。ツイーター用のローカットコンデンサー
は、C=159000÷800Hz÷8Ωです。答えは24,84μF、市販では25μFのコン
デンサーです。コンデンサーはバイポーラコンデンサーがおすすめです。安く、質がいい
です。ネット上では、コイズミ無線で注文できます。ちなみに6dBではツイーターの極性
は逆にします。プラス、マイナスが逆になるという事です。これも理論上の事で、音を聴
いて正相か逆相か決めます。図は2ウェイ(ウーファー+ツイーター)です。ちなみに12
dBの式は C=113000÷( )Hz÷( )Ω L=225×( )Ω÷( )Hzです。
12dBはスピーカーに並列で、ウーファーはコンデンサー、ツイーターはコイルを追加し
ます。正相なのでツイーターは、プラス・マイナスをそのままつなげます。
僕のような改造は、あまりしないと思うのですが、スピーカーがフルレンジ一本で、高音
が欲しいなんてのは、結構あります。そういう時に応用出来ます。ツイーターにコンデン
サー1個だけでも大丈夫です。コンデンサー入れないでアンプにつなぐと、ツイーターは
壊れてしまいます。ちなみにDAYTON AUDIOの型番、例えばDC200−8の最後の
8は、このスピーカーが8Ωだという意味です。上の計算式の例で、ウーファーもツイー
ターも800Hzにしましたが、実際にネットワーク作る時は、ウーファーの落とす所と、ツ
イーターの落とす所の間をあけます。ウーファーが800Hzならツイーターは1000Hzと
かです。6dBはなだらかに落ちますからウーファーとツイーターの周波数が重なります。
800、1000だとクロスオーバーは900Hzあたりになります。上のグラフではクロスオー
バー部分が谷になっていますが、ここは重なる音が両方あって、聴こえる音は逆に盛り
上がります。つまり平らになって聞こえます。これは理論上の話で、実際は違う事が多い
のが自作スピーカーの面白さです。それと同価格なら、間違いなく市販のスピーカーより
いい音になります。箱もしっかりしている事が前提の話です。
ネットで注文して2日でコイズミ無線から品物が届きました。送料は秋葉原行く交通費
より高めですが、労力がかかりません。上がハイカット用コイルで下がローカット用コン
デンサーです。コンデンサーのPARC Audioというメーカーは、スピーカー作ってるとこ
ですから、信頼できます。このメーカーのDCU-f121Wというウッドコーンスピーカー
(左下写真)は最高ですよ。最近、日本製のスピーカーで驚いた製品です。ケンウッド
JVCでもコンポでウッドコーン出しています。あれもおすすめです。同じ価格帯のもの
に比べて、とても質のいい音がします。何故、そんなに知ってるのかは、頻繁に電気
店のオーディオコーナーに行き、視聴するのが趣味だからです。さてさて本題に戻って、
届いたパーツと昔買った手持ちのパーツでネットワークを構成しました。パーツ交換し
ては試聴の繰り返しです。耳がおかしくなるので、もう一本、元となるモニタースピーカ
ー準備して、代わる代わる聴いた方がいいです。耳をリセットする為です。その結果、
下記のようになりました。すごく変則的な構成ですが、自分の好みの音になりました。
アッテネッター(バランス取るための高音用ボリューム)は、不要です。ツイーターだけ
6Ωなので、インピーダンスを揃える為に、直列で2Ωのセメント抵抗入れました。
■ND16FA−6 ツイーター+2Ω+1,5μFコンデンサー(逆相)6dB 13000Hz ローカット ■PS95−8 スコーカー+0,1mHコイル+15μFコンデンサー(正相)6dB 12000Hz ハイカット 1350Hz ローカット ■DC200−8 ウーファー+1,7mHコイル+14μFコンデンサー(正相)12dB 1000Hz ハイカット |
追加で書いたので回路図がグチャグチャしました。あくまで今回の回路図ですから、一般
的なものではありません。テストのソースは、レコード及びCDです。i-Podも使いました。
低音はシマリがあり、ベースランがぼやけず、ギターの胴鳴りなども聴き取れる解像度
です。ボーカルはパーンと張りがあり、気持ちいいほどです。中低音のハリに対して、こ
のND16FA−6というツイーターは、落ち着いた音です。サシスセソがかすれません。
エージング(車の馴らし運転みたいなもの)進めば、もっと良くなると思います。色々な
ジャンルの音楽を聴くのですが、あえて何に合うかといえば、一番はジャズ。大好きな
バド・パウエルのピアノの音などアメージング!(笑)モーツァルトの室内楽も最高です。
交響曲などの大編成はちょっと苦手かな。ワーグナーの9番なんか、ちょっと悲しくなり
ました。エージングで変わるかもしれません。それに対して、女性ボーカルは、とっても
いいです。管楽器がきれいに鳴るスピーカーは、女性ボーカルも得意ですよ。ユーミン
の「LOVE WARS」なんか最高!カーペンターズの「雨の日の月曜日は」カレンの声
がせつなくて、涙でそうでした。IUも良かったなあ〜REALというアルバムの「ひとりの
部屋」という曲なんか、IUがギター持って、そこに立ってる様なリアルさです。マイケル
ジャクソンの「スリラー」は最高に合ってました。R&Bはいいです。さすがアメリカ製で
すね。サンタナの「EUROPA」もギターがセツナイ響きです。ああ聴きたい曲がいっぱ
いです。後は箱の補強かな・・・最後にBOSEのウーファーで懲りたので、今回のDC
200−8は、エッジがウレタンではありません。ゴムエッジです。そういうのを選びました。
ゴムは腐らないよなあ・・・自画自賛かもしれませんが、元よりかなり質のいい音のスピ
ーカーに変わりましたよ。それにしても、とってもマニアックな話でしたね。
■後日談
上に書いた吉本キャビネット製BW1000の箱、専用ユニットは、FOSTEXのP1000K
なんです。1本2000円を切るCPの高い製品なんですが、音が荒れて気に入らないと
書きました。ところがエージングが進んだのか、1月ほどして激変しました。音のカドが取
れたとでもいいましょうか、耳障りだった高音が何ともイイ音になったのです。こんなに時
間のかかるユニットは初めてです。安いけどゴムエッジです。(笑)