クスクス考

 本題に入る前に言葉の定義をしておきたいと思います。クスクスをご存知の方は
とばしてお読み下さい。「クスクス」と普通に言った場合、料理の事をいいますが、
本当は粒粒のパスタが「クスクス」です。そのパスタを使った料理は材料に関わら
ず「クスクス」なのです。これはスパゲッティを考えていただけたら分かりやすいと
思います。個々の料理名はあってもスパゲッティを使えばスパゲッティと呼ぶのに
似ています。
 マグレブ3国(チュニジア、アルジェリア、モロッコ)では、区別なく使っていますが、
文章上の混乱を避ける為、粒粒をクスクス・スムール(仏語)、料理になったものを
クスクスとココでは言葉を決めておきます。
 クスクスは北アフリカの先住民・ベルベル人の料理です。同じ音が繰り返される
という特徴があります。何千年もの歴史のある(一説では3千年とも4千年とも)食
べ物です。クスクスという言葉は、それを蒸す時の音からと言われています。です
              から蒸してこそクスクスらしいといえます。クスクスの蒸し器
              は絵のように2段になっています。最初の仕込みは、デュラ
              ムセモリナ粉を少量の塩水で揉んで粒粒にします。それを
              ふるいにかけて粒の大きさを揃えます。それぞれのサイズ
              のスムールを蒸した後に天日干しして保存します。この作
              業は一年に一度、家族の女性達が集まり、大量に作ってお
              きます。私達が市場で見るクスクス・スムールは、この状
              態の工場生産品です。一度、火を通しているのですから、
              そのまま食べる事ができます。世界最古のインスタント食
              品かもしれません。この特徴を生かして欧米ではサラダに
              入れたりします。クスクス・タッブーレ(最近日本でもみかけ
              ます)という料理です。タッブーレはシリア・レバノン地域の
              料理で、本来はかち割り小麦を使用したパセリのサラダで
す。
 クスクスは先に述べた2段の蒸し器で作ります。下の段でシチュウを煮込み、上
でスムールを蒸すという合理的な調理法です。先人の知恵はたいしたものだと感
心します。現在の蒸し器は、アルミ製とかステンレス製が一般的になりましたが、
昔は素焼き製(釉を塗ったのもある)でした。立ち昇る湯気の中、ふっくらと蒸しあ
がったクスクスは、今でもマグレブのごちそうです。国は勿論のこと、各家庭で味
に違いがあって尽きぬ興味を抱かせてくれます。
 20世紀、北アフリカを植民地化した、あの食にうるさいフランス人をも虜にしたク
スクスは、すっかりフランス人の食生活にも根付いています。

          市販されてるクスクスの蒸し方

 市販のものにはお湯で戻す方法が書かれていますが、こだわるのでしたら是非、
蒸してみましょう!
 蒸し器を準備して(穴が大きい場合は布巾を敷いて)下でシチュウを作ります。
煮込んでいる間、ボウルにスムール(500g)を入れ、オリーブオイル大匙2杯と塩
・小匙1/2杯を混ぜます。なじんだところで、水・カップ1杯(200cc)を混ぜ入れ、
蒸し器に入れます。
 5〜10分ほど蒸したら、一度ボウルに戻してほぐします。その後、もう一度、蒸し
揚げて(これも勘ですが、目安は5〜10分)食べる前に200cc位のソースをから
めます。バターをからめる方法もあります。                            

ちょっとカタイ話!

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クスクスを蒸すイラスト