シリア・ヨルダンの旅−3
<シェフの独断と偏見に満ちた旅行記>
■3日目 パルミラ観光
朝やはり早起きして散歩です。朝焼けに染まる遺跡。誰も居ない朝は荘厳な感じ、独り占めです。
ああ〜幸せ〜観光用のラクダが出勤前の休憩を取っています。
ホテルの食堂から見たパルミラ遺跡です。シリア砂漠のど真ん中にあるオアシス都市のパルミラは、
2世紀にシルクロードの隊商の中継点として栄えました。270年頃に権力の座についたゼノビア女
王が有名です。ローマの属州だったにも関わらず、独立性を保っていたのですが、ローマの進撃に
抵抗して滅ぼされてしまいます。ローマはパルミラの富を独占したかったのでしょうね。地中海地域
を旅すると、それこそウンザリするほどローマ遺跡を見る事になりますが、歴史を知らないと瓦礫の
山にしか見えません。以前の旅を教訓にして、旅行前に教科書を時系列で復習しました。
「ワンダラ〜」と叫びながらワ〜ッと寄ってくる物売り達を振り切ってバスに乗り込み向かったのは、
パルミラの墓場の谷です。お金持ちは、家単位でこうした塔などを作り、棺で収めていました。庶民
は分譲される墓に入ったそうです。いつの時代でも金次第ということなんですね。
墓の谷の風景、すでに風化して壊れているものも多く、地上に出ているものの多くは盗掘にあって
しまっているそうです。この風景は人の儚さを感じさせます。こういう風景を見ていると、無常を感じ
るよりも、だからこそ今を大事にしようという思いが強くなります。死んで花実が咲くものか・・・
三兄弟の墓というところも見にいきました。最近、発見されたところだそうです。墓の前で小さな三
兄弟の物売りが「ワンダラ〜」と遠慮がちに・・・後ろに男親が監視しています。稼ぎの少ないオフ
シーズンなので、どの物売りも必死なんです。ガイドのモハメッド君が三兄弟にクッキーをあげてい
ました。まだ恥ずかしそうな彼らも、そのうち逞しく育ってしたたかな商売人になるのでしょうね。
お墓見学を終え、いよいよパルミラの核心へ向かいました。最初はベル神殿です。250m平方の
この巨大な神殿跡はカメラでは押さえきれません。ベル神殿の本殿跡でさえこの大きさです。入り
口では相も変わらず「ワンダラ〜テンダラ〜」攻撃にさらされます。ラクダには数ドルで乗れるとか。
この神殿は、本殿に神様を祀って豊作を祝ったり、犠牲祭をしたりした所だそうです。日本の秋祭り
みたいなことでしょうね。牛などを生贄にした台なども残っていますが、そんな仰々しい事ではなく、
単純に神様に捧げつつ、皆で料理して食ったというのが本当ではないでしょうか。パルミラのなつめ
やしのオアシスです。木は小ぶりでチュニジアなんかのオアシスに比べると、ちょっと淋しい感じです。
アラビア語が通じる気さくさからか、うちのママがラクダ引きをさせられ、その報酬にワンダラ〜受け
取る不法労働の証拠写真です。勿論、冗談です。ベル神殿から記念門までラクダは2ドルだったみ
たいですが、これも時価です。アラブ世界はお客の価値観で値段を決めるので応相談です。
このラクダに頭を舐められました。地元の連中はゲラゲラ笑っていましたっけ。そう言えば昔、アルジ
ェリアで噛まれた事もありました。意外と気性が荒いので気をつけましょうね。僕だけかな・・・右は、
パルミラであまりにも有名な列柱道路です。
パルミラの円形劇場のステージと客席です。綺麗に残っています。それもそのはず、近年まで砂の
中に埋もれていたそうです。春にはフェスティバルがあって民族舞踊なんかを見れるそうです。それ
はそれで楽しそうですよね。
元老院議事堂と奥には四面門です。山の上にアラブ城が見えます。右は遺跡の一番奥にあるゼノビ
ア宮殿跡、ローマが支配した時に駐留したディオクレティアヌス皇帝の野営地があった場所です。
こうしたガイドの説明を聞いている時もワンダラー少年達に付きまとわれ、久しぶりにキレました(笑)
怒った後は遠巻きにしていました。大人気なかったなあ〜と反省。
ゼノビア宮殿は少し高い位置にあるのでパルミラを見渡せます。同行の人達が右の崩れそうな塔に
自己責任(笑)で登っているのを尻目に、僕は山の斜面を登って撮りました。高所恐怖症です。山は
裾野が広いから恐怖感はないのですが・・・ベル神殿が奥に見えます。でっかい!
列柱道路の最後にある葬祭殿とバールシャミン神殿です。あまりの遺跡の数に贅沢な溜息しか出
ません。ママ曰く「もう柱はいい」とか・・・
歩き回ってお腹がペコペコで辿り着いたレストラン。お腹が空いていた以上に、ここの食事は美味し
かった〜マッザの味付けは勿論、メインのカプシィ(ヨルダンのマンサフ、サウジのカプサと同じ系統
の炊き込みご飯)は絶品でした。鶏肉と仔羊が一緒に煮込んでありました。
食事の後、博物館を見て自由行動になったので店で使う食材探しにパルミラの街に出かけました。
目的は、アラビック・コーヒーを入れる道具とブルグール(かち割り小麦)です。あっとゆう間に買い物
を済ませました。見た目は怖いけど優しい街の人達でした。気になっていたオート三輪の写真もパチ
リ。ガーッと何か言ってる街の人達、聞けば俺も写真撮れって言っているのです。言葉が分からない
と、怒られているような感じです。そりゃ旅行者には怖いって誤解されます。
自由時間が終わって集合した後は夕日を見にアラブ城へ登ることになったのですが、生憎の曇り空
で期待できません。それでも上からパルミラの街の全景を撮りました。
パルミラ遺跡をアラブ城から見た写真です。ライトアップされ、言葉にならない美しさです。ASA1600
の感度にして撮影したので明るく写っています。遺跡の向こうはオアシスです。
空がちょっとだけ茜色に染まりました。お城は安全の為の鎖とかなくそのままで結構怖かったです。
夜はベドウィン・テントで食事です。皆さんが集まっているのはパンを焼くデモを見ているからです。
中華鍋をひっくり返したような鉄板で、きれいに伸ばしたパンを焼いています。焼きたては美味です。
ベドウィン・テントと言っても本当に暮らしているところではなくて観光用です。シェフが作っている
のは昼にも食べたカプシィ。昼ほどではなかったけれど、美味しかったです。
TOPページへ戻る 4日目を見る
■おまけ(アラビック・コーヒー入れ)
お客様から「パルミラで買ったアラビック・コーヒーを入れるのはどんなモノですか」という質問を受け
たので、ここでお答えします。小さなポットがトルコ・コーヒー用(一人前用)のジェズベです。大きい
のがアラビック・コーヒーを入れるポット(イブリック)です。どちらもコーヒー豆は粉状に擂ってありま
す。トルコ・コーヒーはストレートで、アラビック・コーヒーはカルダモンなどの香り付けしてあるのが、
一般的です。トルコ・コーヒーは、豆と砂糖と水をジェズベに入れて、泡立てながら直火で暖めます。
アラビックコーヒーは、イブリックに豆と水を入れ直火で暖めます。砂糖は入れずに粉状の豆がイブ
リックの底に沈殿しています。トルコ・コーヒーは、カップの底に沈殿します。後で甘さを加えることは
出来ません。トルコ・コーヒーがエスプレッソの元祖で、アラビック・コーヒーは、フィルターで落とした
様なコーヒー(カルダモンの香りが爽やか)です。「昔、アラブの偉い坊さんが〜♪」コーヒールンバ
のコーヒーは、本当はこれですよね。(2009.2.25記)