トップページへ戻る シェフの見た地中海の歴史と文化ー8                      ガイドを雇う?

                    ツール・ド・フランス−1 

   お金がなくって以前は、ヒッチハイクをして旅をしていました。この旅は予定通り
  いかない事と、行きたい所に行けないもどかしさから、程なくして止めてしまいま
  した。次に選んだ方法は、以前働いたルールド(ピレネーにあるカソリックの聖地
  ・奇跡の泉で有名)で知り合った中学生のドミニックの影響で自転車旅行に切り
  替えました。自転車は憧れのプジョーのグラン・ツーリスモというモデル。しかも、
  買ったのは自転車屋ではなく、パリ・プランタン。これは、しっかりした書類が欲し
  かったせいです。コントロールにあった時、有名店なら変な疑いをかけられない
  だろうという考えでしたが。後で考えると、あまり意味がありませんでした。
   フランス、いえ、ヨーロッパは自転車が盛んで、自転車に必要な専門的なもの
  はデパートでさえ、全て手に入りました。プランタンになくても隣はギャラリー・ラフ
  ァイエットというデパートもあります。日本でのイメージからすると信じられないかも
  しれませんね。ここで「世界遺産」のナレーションをしている彼のお父さんにお会い
  しました。俳優さんは、やはりオーラを発しています。日本人が珍しくないパリです
  が、彼にはフランス人が振り返っていました。私は目が合った時に会釈しました。
  「あッ日本人ですか」という顔をされて「よっ」と右手を挙げました。イメージ通りの
  方でした。買ったばかりの自転車を有名デパートの中を押して歩いている私は、
  絵的には、相当変な筈でした。(俳優さんのヒントは大型犬と発音が似てます)
   フランスで自転車を外に置いておいたら、盗めというようなものですから、部屋
  までエッチらコッチらと運び込んで、ニヤニヤしながら磨いていました。いよいよ旅
  の始まりです。
   積んだ荷物は、着替えと洗面道具、寝袋、テント、キャンピングガス、鍋、釜など、
  どこでも暮らせる(?)体制です。飼っていた猫もお供でした。有名なミシュランの
  地図(ガイドブックで有名ですが、元はタイヤメーカー)を頼りに、西に向いました。
  印象派絵画の素材となった町々を訪ねる旅です。ルーアンやル・アーブル、オン
  フルールなど、ノルマンディを巡りました。なかでもオンフルールは大好きな街で
  す。印象派が好きな方は絶対におすすめします。
   小さな港を囲んで、4階建て位のかわいい家々が並んでいました。ベルギーの
  ブルージュを思い出していました。港の一角にある教会は木製で船大工が作った
  とかで、船をそのままひっくり返したような構造でした。石の建物ばかり見ていた
  目には新鮮です。バイキングが出てきそうな雰囲気の建物。港に面したこぎれい
  なホテルに部屋をとりました。窓には赤い花の植木が飾ってあります。乙女チック
  とでも言うのでしょうか。きっと私の瞳にはいくつもの星がキラキラと輝きを放って
  いたに違いありません。「まあなんて素敵なレースのカーテンでしょう」(・_☆)・
  自転車でかいた汗を流し、街をぶらつきました。パリッ子が海水浴に訪れる場所
  だけにみやげ物屋も多く、画廊も並んでいました。冷やかし半分に覗きながら・・
  夜のとばりがおりて、ライテングされた港も素晴らしくロマンチックなものです。でも
  所詮、がさつな男です。ワインが飲みたくて、地元の人で賑わうビストロに入りま
  した。前菜を軽くサラダヴェールで済ませ、ムール貝のスープ炊きをセカンドに!こ
  れは量が多いのですが、味が絶品!タルチーヌ(バゲットにバターを塗ったもの)と
  一緒に食べました。テーブルのそばにバケツが置いてある意味が分かりました。キ
  リッと冷えた白とムール貝!\(゚o゚;)/ウヒャーです。食べては殻をバケツにポイです。
  メインは牛肉のファルシ・カマンベールソース!これがまたシードルに合うこと!一
  人でガツガツ食べてる東洋人は皆の注目でした。満足、満足。とおじさんが近付い
  てきます。珍しい事ではありません。おきまりの何人か?から、どうして来たとか、
  年齢はいくつだとか・・・あなたは警察ですか?という質問攻め・・最後に「俺の奢り
  だ」とカルバドスをごちそうになったので、悪印象がガラッ!(本当に自分の性が悲
  しい)「ノルマンディは食べ物が美味しい!」と社交辞令。おじさんが十年モノのカル
  バドスをカーヴから。聞けばカウンターで飲んだくれてた、このおじさんがここのオ
  ーナーと!またこのカルバドスが何と表現していいのでしょう。強いお酒は鼻にアル
  コールがツンとくるのですが、これには全くなくて、喉越しが良くて最後に林檎の香
  りがフワーッと広がるのです。ホテルに戻る頃にはベロベロになっていました。部屋
  では猫がバスケットで寝ていてチラッと僕を見て「ふん」と鼻をならしてふて寝。(フ
  ランスではペット持込OKのホテルが結構あって、ここのマダムが猫好きで餌まで
  くれていました)躾してあるのでトイレも砂場でしかしませんし、安心です。飼い主の
  ほうが、よほど問題でした。「我輩は寝子であるかあ〜けへへ、ころっとすりゃヨコな
  んてね〜へへh」てな調子でした。

   この自転車の旅はモンサンミッシェルからナント、ボルドー、ピレネー、南仏、アル
  プス、スイス、ドイツ、ルクサンブルクと続き、ナンシーからブルゴーニュを通り、パリ
  へ戻るまで続くのです。思い出しただけでゾゾです。
   2回目(次の年)の自転車の旅は、一路オルレアンからマシフサントラルを抜け、
  アンドラを通り、スペイン、ジブラルタルを越え、モロッコへ。そしてアルジェリアへ、
  船でマルセイユ・・・うひゃ〜自分でもよくやったと思う。さあ、これらの話しは次回
  へと少しずつ進んでいきますね。まるで自転車のように。そうそうサハラをうまく走
  るコツとか・・・